9月25日0時頃台風16号は東シナ海で勢力を失って、台風の暖気が寒気と接触したことでひときわ過度の大きい温帯性低気圧が発生しました。低気圧は東進しながらすぐに閉塞前線を作り、中心から南西の広い雨域(東海地方)に大雨をもたらしました。この雨雲は初め丹沢にも少雨を降らせましたが、やがて南下し、箱根、伊豆を乗り越えること無く、小田原付近では消えています。県内では厚木、横浜、藤沢など点々と降らせていましたが、やがて雨はあがりました。寒冷前線が中心から南西に長く伸びていますが、午後2時〜3時頃には激しく動く雲が浮かぶ青空となり、10〜15m/sの強風が吹きました。
午後2時半頃から次第にそれまで雲は全くなかった関東平野一体に雲が出始め、やがて発達して雨雲になっていきました。おそらくこの台風がもたらした湿った大気を大量に含んだ温帯性低気圧が通過した後に、上空に寒気が入ってきたからではないかと思われます。日射により地上気温が高く水蒸気量は多い空気と、上空の寒気との温度差が大きくなり(不安定になり)積乱雲が生じました。藤沢も少雨が降りました。その後南寄りの強風がやむとともに、北風に変わり涼しくなりました。藤沢AWSからそのことがよくわかります。台風の消滅によりその熱エネルギーが温帯性低気圧にどのように引き継がれていったか?を考える大変興味あるデータです。
91年前の大正末期にはまだ天気図は作成されていましたが、気象情報を国民は知らすシステムは出来ていませんでした。台風とそれに伴う温帯性低気圧からのびた寒冷前線通過による強風のふく中、大地震が発生し大災害になったのです。新聞に天気情報が掲載されたのは翌年、ラジオ放送が始まったのは3年後の昭和元年のことです。
図1 台風16号(999hPa)と閉塞前線を伴った温帯性低気圧(1002hPa) 気象庁天気図(左:14日3時、右:同日18時)より
図2 気象庁レーダーナウキャスト(左:25日10時、右:同日18時)
図3 藤沢AWS(上段:風向=青色、表示の180度は南風、赤色は最大風速10〜15m/s)
(中段:赤色:気温、緑色:湿度)(下段:黄色:日射量、水色:降水量) 藤沢AWSより