シティ・ウォッチ・スクエア

風に吹かれ、波の音を聞き、土に触れ、地域の環境を知り、未来を考える

TEL.050-5586-0381

〒251-0023 神奈川県藤沢市鵠沼花沢町1-14

08日

地球温暖化曲線の系譜(1)はじめに

19世紀後半以降の世界平均気温の推移をみると、人々は1930年代には顕著な温暖化に直面していたことがわかる。1960年代になると、天気の専門家達が過去20年間に渡り寒冷化が起こったことを発見した。気候がこのように深刻な振舞いをするという,それまでにない懸念が生まれ,1970年代になると何人かの科学者がそのまま継続して地球は徐々に寒冷化することを予測した。当時この要因について,長期間を考えた場合に自然におこる周期現象,あるいはその当時産業から排出する量が増大したスモッグや煤塵などの大気汚染物質の影響と考えた。その後、大規模な火山噴火などが寒冷化の原因になることが明らかにされる。

一方、寒冷化を支持する科学者達以外は,そのような大気汚染の効果は一時的であり、温室効果ガスの排出が長期的には温暖化をもたらすと指摘した。寒冷化にせよ温暖化にせよ,彼らは自分たちの知識が限られていて、どちらの予測も推定の域をでないことも認識していた。しかし、その後の気候システムの理解の速度はめざましかった。1970年代後半に、温暖化が卓越するという見方は寒冷化論との論争に打ち勝ち、主に北半球の現象として現れた寒冷な期間は一時的かつ限られた地域の変化とされた。温暖化は21世紀に入っても続き、海洋の深部まで影響が及び気候システムに顕著な変化が起こったことが明らかにされた。

過去1000年以上に及ぶ北半球の平均気温変動を図に示す。上図はMann et al. (1999)によるもの、下図はIPCC第4次評価報告書(2007)がまとめたものでより再現精度が高い。下図の茶色はプロキシデータから求めたもので濃度が濃いほど確率が高く、黒線は気象観測データによる変動を示す。図には、中世の温暖期(1000年前後に現れた高温期)とその後の小氷期(1400年~1800年を中心にした低温期)、全期間を概観した場合のホッケースティック型の気温上昇、1940年代~1970年ころの気候ディミングなどを読み取ることができる。さらに最近では、気候ハイエイタスが現れ、地球の気候は消して平均値の周りを周期的に変動するものではないことがわかる。

このシリーズでは、The discovery of global warming(http://www.aip.org/history/climate/20ctrend.htm#M_8_)を参考にしながら、これまでに手元に収集した論文を手がかりにして、地球規模の気温変動曲線の系譜をたどる。なお昨年、「地球温暖化の科学的な根拠-観測と研究の歴史」(トップページのトピックスに「地球規模の気温上昇の研究史」)を連載したが、このシリーズではより広範な視点で、気温変動曲線の背景となった出来事や研究者達の論争に注目して解説する。

上図(Mann et al., 1999),下図(IPCC, 2007),本文中参照

上図(Mann et al., 1999),下図(IPCC, 2007),本文参照