相原さんと丸田さんから、members@に、偏形樹の話題が投げかけられました。興味のあるより多くの方との情報交換の場として、ブログにて関連した情報を提供します。その前に、丸田さんは、この分野を含めた植物生態学で第一人者でいらっしゃるので、こうした議論ができることは大変光栄でもあります。
さて、富士山周辺の偏形樹を調査し、判読した卓越風向を矢印でしめした結果が下の図です。この調査および作図は、泉さんと一緒におこなったもので、今となっては懐かしい図です。卓越風向から見て取れる流線は、地表付近でほぼ西からの(寒候期の)風が卓越しており、南北側では富士山の裾野を回り込み、森林限界(黒実線)が低い地帯まで広がりサンプル数は少ないですが、山体の東側では後ろ側に回り込む風が示されています。
次に示す写真と図は、富士山に見立てた模型の表面の流線を可視化したもので、泉さんが水槽実験で明らかにした結果です。実験結果をもとに描いた流線は、実際の偏形樹の調査で求めた卓越風向とよく似ています。実験室と自然界の流れが一致しているということは、両方の現象で起こっている物理的関係が同一である可能性を示唆しています。これを明らかにする厳密な手順としては、両者の関係に相似則を適用して吟味する必要があります。相似則の考え方については、別の機会に紹介することにします。