大石が描いた風速鉛直分布に「上層の強い西風」が示されている。これこそ「ジェット気流」である。以前に、CWSのブログにて「大石和三郎と高層気象観測」を連載した(現在も閲覧可能)。そこでは「ジェット気流」と命名される前の時代(1927年)に、時代背景と彼が夢見たモノを取り上げた。連載を進める過程で疑問となった点がある。後日(第2次大戦直後‐1947年)にC.G.ロスビーらが解明した「ジェット気流」との関係である。近年のアメリカの文献で「ジェット気流」の真の発見者は大石、という、いわば大石復権論(大石は観測結果をエスペラント語で発表したため、欧米の研究者の目に触れることは無かった)があるが、果たして当時の気象学分野では何が議論されていたのだろう。ロスビーはどんな時代を生き、どのような人物だったか?そして「ジェット気流」との関係は?、アメリカ気象学会誌に掲載されたN.A.フィリップの報告を参考にして連載する。(林)