シティ・ウォッチ・スクエア

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生物・生態

ソメイヨシノ開花

昨日(3月21日)、東京と横浜で開花宣言が出ました。我が家の桜はまだ三輪しか綻んでいませんでしたが、今日一気に開花しました。例年、東京都心よりもわずかに遅い開花となっています。なお、満開日については特定するのが難しいので、記録は取ってありません。

2019年3月22日 藤沢市用田

藤沢市用田におけるソメイヨシノ開花日
2011年 (平成23年) 4月 2日
2012年 (平成24年) 4月 4日
2013年 (平成25年) 3月 13日
2014年 (平成26年) 3月 26日
2015年 (平成27年) 3月 27日
2016年 (平成28年) 3月 23日
2017年 (平成29年) 3月 29日
2018年 (平成30年) 3月 22日
2019年 (平成31年) 3月 22日

昨年(2018年)3月31日 満開の桜と昇る月

イチョウの塩風害(その2)

14日(日曜)にある目的地までの移動中にイチョウの状態を写真にとりましたので、報告します。3か所です。(1)長久保公園植物園内、(2)藤沢市石川:セブンイレブン藤沢石川店角交差点付近、湘南台駅から西へ約2.5㌔、(3)妙福寺境内:藤沢市打戻2584。

(1)右側が海側:海岸線より約1.8㌔

(2)左側が海側:海岸線より約10.5

(3)右側が海側:海岸線より約11㌔

 

平塚の海岸における風衝木(11月3日投稿)

今夏に行った勉強会で、丸田さんから風衝木について話題提供して頂きました。その後、平塚を通るたびに紹介して頂いた風景が気になっていました。たいぶ時間が経過しましたが、私も思い当たる場所を見て歩いた際に撮った写真を紹介します。樹種はこれから調べます。海に面して配置した柵の後背にきれいに風衝木が連なっていました。林の中は深く風下では森林のようでした。長い時間をかけて植生が風と戦って生育していることがよく見て取れました。帰りがけに、エンジン搭載のパラグライダーのプロが、これからお客さんと二人でフライトする、と準備している場に出会いました。数千メートルの高度を飛ぶそうで、ひとしきり渡り鳥がどのように飛ぶ高度を知覚するか、熱弁を聞きました。自然の中の風と生物の関係はいつでも興味があります。

 

偏形樹にまつわる話題 (4月5日)

相原さんと丸田さんから、members@に、偏形樹の話題が投げかけられました。興味のあるより多くの方との情報交換の場として、ブログにて関連した情報を提供します。その前に、丸田さんは、この分野を含めた植物生態学で第一人者でいらっしゃるので、こうした議論ができることは大変光栄でもあります。

さて、富士山周辺の偏形樹を調査し、判読した卓越風向を矢印でしめした結果が下の図です。この調査および作図は、泉さんと一緒におこなったもので、今となっては懐かしい図です。卓越風向から見て取れる流線は、地表付近でほぼ西からの(寒候期の)風が卓越しており、南北側では富士山の裾野を回り込み、森林限界(黒実線)が低い地帯まで広がりサンプル数は少ないですが、山体の東側では後ろ側に回り込む風が示されています。

矢印は卓越風向、黒丸は強風による滑落などの被害発生場所、黒実線は森林限界

矢印は卓越風向、黒丸は強風による滑落などの被害発生場所、黒実線は森林限界

次に示す写真と図は、富士山に見立てた模型の表面の流線を可視化したもので、泉さんが水槽実験で明らかにした結果です。実験結果をもとに描いた流線は、実際の偏形樹の調査で求めた卓越風向とよく似ています。実験室と自然界の流れが一致しているということは、両方の現象で起こっている物理的関係が同一である可能性を示唆しています。これを明らかにする厳密な手順としては、両者の関係に相似則を適用して吟味する必要があります。相似則の考え方については、別の機会に紹介することにします。

上:水槽実験による流れの可視化 下:その結果から描いた流線

上:水槽実験による流れの可視化
下:その結果から描いた流線

梅の開花

2月11日(晴れた暖かい日)、藤沢市片瀬で梅の花が開花しました。写真は4日後に、かなり開花が進んだ状態です。近隣で梅の花を観察すると、例えば南向きの壁の近くに植えられている場合は、すでに5分咲きほどの開花状況です。これは、太陽光が壁に反射すると同時に、夜間に壁から熱が放出される効果により、つぼみの表面が熱エネルギーを吸収した結果です。つぼみ周辺の空気の温度(気温)も高まりますが、放射の効果が大きく効いているはずです。まだまだ気温は低く、寒さに耐えつつ咲く梅の花は、桜の花よりも控えめで我がことのようで好みです(?)。カレンダーをみるともうすぐ3月です。皆さんの近くでは、梅は開花したでしょうか。桜のつぼみはいかがですか。

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桜の季節に寄せて-温暖化で桜開花期間は短縮する

地球温暖化により、桜の開花日が早まる傾向がある。詳細には、冬季に低温に遭遇するか否が関わり、季節毎の気温変化特性が関係して開花に至るため複雑である。同時に、開花から満開までの期間も変化することが考えられる。

もしも、花見ができる日数が減れば、市民が楽しむ機会が減ることになる。観光産業にとっても、観光資源が減少するという負の影響が現れるだろう。塚原・林(2011)は、過去のデータから開花期間をモデル化し、これに地球温暖化の将来予測結果を条件に用いて全国の開花期間がどのように変化するかの予測を行った。

今世紀中頃に、現在よりどれだけ差が出るかを図に示す。地域による特徴を見ると、東北ほかの地域で開花期間が短くなる割合が大きく、九州地方などは小さい。この理由として、気温の昇温幅が他地域に比べて小さいことが考えられる。現在気候の条件では、全国平均して8.3日で開花から満開に至るが、2046~2065年までに2.1日減の6.2日で満開に至るようになる。

盛岡は現在、5月のゴールデンウィーク頃に桜が咲くことが多く、この時期に「さくら祭り」が開催されており欠かせない観光資源となっている。しかし近年は開花日が早まり、ゴールデンウィークには咲き終わってしまう年が増えていることが指摘されている。今世紀末になると、現在も6日弱と開花期間の短い北日本の盛岡では約3日に、現在の半分近くに短縮してしまうと予測される。確実に、ゴールデンウィークまでには桜は咲き終わってしまう可能性が高い。

(図の出典 塚原あずみ・林 陽生,2011:温暖化がサクラの開花期間に及ぼす影響.地球環境,17 「季節現象特集号」)

今世紀中頃における桜開花期間の変化(現在との差の分布) (塚原・林,2011)

今世紀中頃における桜開花期間の変化(現在との差の分布) (塚原・林,2011)

桜の開花と満開

桜は夏頃に翌春咲く花のもとになる花芽を形成し、休眠に入ります。花芽は冬の低温に一定期間さらされると休眠から目覚めます(休眠打破)。開花宣言は各気象台や測候所の定めた標本木の花が1枝に5〜6輪開いた状態で出されます。標準木は神奈川県は横浜山手台地にある横浜地方気象台の横浜市元町公園にあります。藤沢では標準木はありませんが、かつて県立総合教育センターの地学の職員が観測を続けていた時期には、食堂前のソメイヨシノで記録していました。写真左は4月1日の体育センター(善行)の満開の様子、写真右は県立総合教育センター西方向の巻層雲です。

体育センターソメイヨシノ桜満開県立総合教育センター巻層雲ひこうき雲

2014年の横浜での開花は3月25日で、満開は31日でした。2月の気温が例年より低く推移したので休眠打破から花芽の成長がスムーズに進み、3月21〜24日の気温上昇が早期の開花につながったと思われます。

 

 

水稲の収量は気温だけでは決まらない

地球温暖化は農業へ影響する。特に、主な食糧である水稲の収量がどう変化するかを知ることは重要だ。水稲収量の変化は、気温上昇や降水量の集中化(時間的・空間的に)ばかりでなく、日射量の変化にも関係している。日本の水稲栽培は、水田の灌漑がゆきとどいているので、結局、気温と日射量がどのように変わるかがポイントになる。

水稲収量が、気温と日射量の両者に依存する実態について、田中(2011)が興味ある図を作成した。横軸は播種から出穂までの積算気温、縦軸がその期間の平均日射量、図中の色分けは収量の水準を示しており、赤が最も高収量の場合で、次いでピンク、薄ブルー、青の順番に収量が低くなる。この図を見ると、まず、気温と日射量の間には正の関係がある。これは当然だ。加えて、高収量の場合の集合が日射量が多い方向へシフトしているように見える。すなわち、同じ温度条件でも日射量が多い栽培環境のもとで収量が高いことを示している。

換言すると、地球温暖化の条件のなかで、高温で日射量が少ない変化が起こる地域や年には収量が減少すること、高温でも日射量が多ければいわゆる高温障害による減収のリスクが小さいことが示唆される。図の中の一つ一つのプロットは、異なる地点を示すだけでなく、同一地点でも異なる年の結果を代表している。

水稲収量の水準(赤~青)ごとに整理した積算温度と日射量に対する依存性

水稲収量の水準(赤~青)ごとに整理した積算温度と日射量に対する依存性